★昔は、餅は正月のものと思っていた。暮ともなれば、モチつく音が聞こえ、元旦、または二日にはお雑煮を食べる風習は、まさに日本の風物詩そのものである。その風習が、今もしっかり残っているのはうれしいことだ。もっとも、年末から海外へ出かけることなどの多くなった昨今は、それをどこまで言えるかは疑問だが。
★正月はともかく、餅は正月を離れて一人旅。年中あっていつでも食べられる。すぐれた保存食であるからだが、手軽に食べられるのがいい。次々と新顔が出てくるインスタント食品のあふれる中に、古風ながら厳然と存在感がある。
★夜の仕事に、何かちょっと食べたいなと思い出したのが餅。残りが一つになったので翌日「さとうの切り餅」一袋を買った。おや?少し小さい感じ。何気なく前のと比べてみると大きさは同じだが、厚さは一ミリ半ほど薄かった。安い価格に見せては売りやすくしたのか。実質の値上げを目論んだのかわからない。
★新しいイタリアンの店ができて誘われて出かけた。これまでの荻窪の店にない美味さがあった。また来たいと思って夜のメニューについても聞いてみた。昼の価格であるようだが、何気なく出た言葉は、価格を高目でも内容で行くか安めにしていくか。内容を維持することに悩んでいるという。
★そういえば、メニューがよく美味しく安いと評判の和食の店があった。店長が替わって同じメニューで、もっとお客を多く呼ぼうと安い値段にさげた。当然、客は増えたが、お店はやがて閉店した。
値段というより客層が変わったことが、その店には致命傷となったと思う。いい店だったのに。
★こじんまりとそば専門をやって美味しいと評判の店。自分で産地を選んで買っていたが、そこから買えなくなったという。聞くと、今年から大手インスタント食品が買い占めたからだという。カップ麺、インスタントと馬鹿にはできない昨今である。みんな一生懸命生きている。 松葉 襄
表紙・女みこし 撮影・松葉 襄
コラム324号
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